家畜の毛刈り

2012年05月01日

1.  山羊、牛、馬、ラクダ

春の中頃から、馬のたてがみを切り、ラクダの首や喉の毛を刈り、そして山羊の毛を梳く。山羊の柔毛(nooloo)の中に剛毛がまだ少ない内に梳いてしまうのが良いので、柔毛が膨らみを持つのを待ち、春先に行うのが適している。雄や妊娠していない山羊の柔毛は早い内に膨らみを持つ。

山羊を横に寝かして3本の足を縛り、毛を梳く。4本の足を縛ってしまうとお腹が膨らみ、破裂する危険であるので行わない。地面にそのまま横にすると毛に土がついてしまうので、乾いて毛のなくなった皮の上で横に寝かし、毛を梳くと仕事が速い。

また、同時期に馬や牛の毛を短い歯の櫛で梳き取る。梳き取るのは風の無い日に限られており、何日か掛けて行う。人に慣れていない暴れ馬の毛を梳き取ったり、たてがみを切ったりするのには、男性の勇気と力と能力が要求される。耳をつかんだり、口を縛ったりしておとなしくさせ作業を行うが、それが駄目な場合は、横に寝かし、押さえつけて作業する。

羊の毛は夏に毛が膨らみを持つので、その時に刈る。毛が膨らみを持ち、かつ剛毛が生える前に刈る。春夏の境になると岩場や背の低い木の生えた場所は、牧草地として選ばない。なぜならば、岩や木に身体をこすりつけ、毛が抜け落ちるためである。羊の毛が膨らみはじめるのは、ナーダムの頃である。腹部や胸部、喉部の毛を引っ張り、風を入れ込むと早く膨らむ。必ず毛が膨らんでから刈るというのが鉄則だが、例外として毛を引っ張って刈ることもある。しかし、この方法は第一に毛が完全に抜けてしまい、第二に大変痛みを伴うので、家畜にはあまり好ましくない。

羊の毛を刈るのは、風の無い、晴れた暑い日を選ぶ。雨の日は湿気があるため、毛の膨らみがしぼみ、ハサミが入り込まない。雲のある涼しい日は、羊毛脂が固まるので、難しい。よって、太陽の照りつける昼間に毛を刈るのが一番適している。

子羊は夏の中頃に毛を刈る。今年最初に生まれた子羊は先に毛が膨らみ、遅く生まれた子を待って1日で毛を刈る。子羊はダニがいるので、何日もかけて毛を刈ると最後の子羊にダニが集まってしまうため、1日で作業を終わらせる必要がある。子羊の毛を刈る日は、近所に伝え一緒に作業を行う。夏に毛を刈った羊や剛毛を刈った山羊は、急に寒くなったり、雨が降ると凍えて死んでしまったりすることがある。しかし、大型家畜がこの様な犠牲になることは、ほとんど無い。子羊の毛を刈った日から、多くの母羊は自分の子がどれか分からなくなり、乳を与えなくなる。そうすると、乳房が張る病気になったり、乳の出が悪くなったりする。そのため、子をかえりみなくなった母羊をよく注意する必要が出てくる。