ナーダム
ナーダムは、遊牧民にとって数少ない社交の場であり、人々は新しく作ったデールに身を飾り、おしゃれして集う。夜には、コンサートなどが開かれ、村は珍しく夜遅くまで賑やかである。
競馬
モンゴルの競馬は、男女問わず子供が騎手を務める。身体が小さければ、14歳だろうが競馬に出場する。彼らは、少しでも重さを軽減するために鞍のない裸馬に乗ったり、素足で乗ったりすることもある。何10km疾走する姿は、すでに一人前である。
大人は、自分の馬の調教に余念が無い。ナーダムの1ヶ月ほど前から、馬の調教が始まる。体重の少し重くなった馬には、フェルトなどの厚い布を身体に巻きつけ、汗をかかせ贅肉を落とす。できあがった馬の身体はまさに芸術作品である。
ナーダムが近づくと、数kmから走ることに慣らさせる。これは、馬も騎手となる子供にとっても重要である。また、実際の距離はかなり長いため、スピード配分なども勝利に大きく響く。
ナーダム当日。騎手の子供達は、競馬用の衣装に着替え、競馬馬を引き連れ、早朝ゲルを出発する。その際、子供は馬を引き連れ、ギンゴーを歌い、ゲルのそばの馬繋ぎ場を何周かする。馬主は勝利と無事を祈り、少し離れたところから、ミルクを奉げる。出発する時には子供の鐙にミルクを掛ける。
会場に着くと、馬の検査が行われる。モンゴルの競馬は主に年齢別になっており、歯を見てチェックされる。
種類別に以下の距離を走る。
- ・6歳馬(ikh nas)30km
- ・5歳馬(soeolon)28km
- ・4歳馬(hyazaalan)25km
- ・3歳馬(shudlen)20km
- ・2歳馬(daaga)15km
- ・種馬(azraga)28km
- ・側対歩の馬(joloo)10km
(ただし、距離は地方により少し異なる)
レースが始まる前にそのレースの出場馬全てがギンゴーを歌い、周る。この歌によって、子供の闘争心は一層高まる。そして、先導者に引率され、スタート地点へ。馬が戻ってくるまで、大人たちはしばし相撲や宴会を楽しむ。
馬がゴールに近づいてきたことを人々が口々に知らせると、馬主は、馬を駆け、自分の馬を探しに行く。
次々にゴールに駆け込んでくる馬も子供も、息絶え絶えである。中には落馬し、馬のみがゴールしてくることもある。(もちろん、その場合は順位に認められない。)
表彰式では、各レースの先着5位にツォル(称号)が唱えられ、馬乳酒が掛けられ、ハタグが掛けられ、祝福される。
また、2歳馬のレースのみ、来年頑張るように、とブービー賞がある。
相撲
モンゴル相撲に土俵も制限時間も無い。手の平が着いても、大丈夫である。
身に着ける衣装は、帽子(),胸の開いたチョッキ()、パンツ()、長靴()である。何でも、昔々、相撲を競ったところ、優勝したのはこっそり参加した女性だったという。これに憤慨した男性は、一目で女性と分かり、女性が参加できないよう胸の開いたチョッキを着るようになったという話もある。
国のナーダムは、512人の力士が参加し、1度に16組の取り組みが行われ、トーナメント式で試合は進められる。村のナーダムでは、強者は国のナーダムに参加してしまうため、そこまで人数も集まらない。
試合開始前、土俵に揃った力士には1人ずつ介添人がつく。彼らは力士の帽子を受け取り、ツォル(称号)を唱える。その間、力士は鳥が舞うようなポーズで介添人の周りを回る。取り組む直前には、自分の身体を叩き、気を引き締める。
技は何百にも及ぶと言われるが、素人目には技のことはよく分からない。ただ、足技で倒したり、衣装を引っ張って倒したりする姿を良く見る。
勝敗がつくと、勝者は腕を広げ、再び鳥が舞うように舞う。敗者は、チョッキの紐を解き、勝者の脇の下をくぐる。勝者はその後、帽子を被り、再び鳥が舞うように舞いながら、国旗を1周する。そして、そこに備えられているビャスラグ(チーズ)を取り、ばらまく。このビャスラクは、幸運を招くと言われ、人々はこぞって受け取る。その姿は、日本の豆まきと同じである。
力士の称号は、以下である。
- ・ハヤブサ 5,6回戦を勝ち抜く
- ・象 7,8回戦を勝ち抜く
- ・獅子 9回戦を勝ち抜き優勝するか、3回準優勝する
- ・巨人 獅子の称号を持つ者が優勝、もしくは3回準優勝する
この名称の前に、国(uls)、県(aimag)、村(sum)が付く。
弓矢
弓矢の競技は、主に大きな都市でないと行われないため、実際に私は見たことがない